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神戸家庭裁判所 昭和52年(家)2895号 審判

本籍・住所 兵庫県明石市

申立人 木原弘

国籍 英国

住所 申立人に同じ

事件本人 陳秀福

主文

申立人が事件本人を養子とすることを許可する。

理由

1  申立人は、主文同旨の審判を求めた。申立の実情の要旨は、「申立人は、昭和五一年一一月一一日中国人である申立外宋美英と婚姻した。事件本人は、宋美英の非嫡出子として一九六六年四月一六日香港において出生したものであり、申立人と実母の婚姻以来、申立人ら夫婦の許で養育されている。申立人は、事件本人が妻である宋美英の実子であり、事件本人を現実に養育している以上、正式に自らの子(養子)として監護養育の任にあたることを希望し、宋美英も同様の希望である。」というにある。

2  本件記録添付の各戸籍謄本申立人提出の各資料、ならびに申立人および宋美英に対する各審問の結果によると、上記申立の実情の要旨にかかる事実がすべて認められるほか、申立人は日本人であるが、事件本人は香港で出生したため英国籍を取得していること、事件本人は、出生以来香港において母宋美英に養育されてきたところ、母の婚姻により、直ちに申立人の手で事件本人母子の日本への出国の手続がなされたが、昭和五二年六月二六日にようやく、両名の来日が実現し、爾来事件本人は申立人および母宋美英とともに肩書住所地に居住して、神戸中華○○学院に通学し、申立人ら夫婦によつて監護養育されていること、申立人は洋菓子職人として働き、年収約三〇〇万円を得ていること、以上の事実が認められる。

3  本件は、いわゆる渉外養子縁組事件であるところ、上記認定のとおり、申立人は日本人であり、事件本人は英国人であるが、ともに兵庫県明石市内に住所を有しているので、日本の裁判所が本件申立について裁判権を有し、かつ、当裁判所が管轄権を有することは明らかである。

4  法例一九条一項によれば、養子縁組の要件は、養親たるべき申立人については日本法が、養子たるべき事件本人については英国法が、それぞれ適用されるところ、日本法においては、事件本人は、上記認定のとおり、申立人の妻の実子であるから、本件養子縁組について家庭裁判所の許可は必要でない。しかしながら、英国法では、未成年者の養子縁組は、裁判所の養子決定によつて成立するものとされているので、本件についても養子決定を要するところ、この決定は、わが国の家庭裁判所の許可(審判)をもつて、これに充てることが相当である。

5  そこで、日本民法および英国法に照らして考えるに、前記2で認定したところによれば、申立人が事件本人を養子とすることに妨げとなるべき事情はなく、しかも、本件養子縁組は、事件本人の福祉に合致するものと認められるので、本件申立は理由がある。よつて、本件申立を認容することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 下方元子)

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